ICU に居る時は痛みとの闘いで、正直覚えていることが少ない。
薬による幻覚だったのか、睡眠不足ゆえの夢と錯覚の狭間だったのか、もはや今となってはわからないことも多い。なので、はっきり覚えていることだけ書いていこうと思う。
私の主治医はS先生。
若い女の先生だったので、しかも、こんな重傷の私を手術してくれたので(その後手術は複数回あるw)、失っていると思っていた足が残っていたので…、初めてS先生に会った時の私は「この先生は実写のドクターXか…。」と心の中で呟いていた。
その先生に、ICU で私が真っ先に聞いたこと。
「歩けるようになりますか?」
「歩けるよ!」、と先生。
きっと普段から元気が良いのであろうS先生は、私に迷わずハッキリとそう言った。
励ましでそう言ってくれたのかも知れない。慰めでそう言ってくれたのかも知れない…。
だって、足どころか、大丈夫なはずの手すらまともに動かない。体にはありとあらゆる管や機械が付いているのに、この時点で歩ける要素なんて何1つ無い。
でも不思議だった…。なぜか私は、
『歩けないはずが無い。』
と、その時から思うようになっていた。