大部屋に移った頃からようやく、自分の身体の状況がわかるようになってきた。
足が全く動かない…。
それまでは、手ですらまともに動かなかったから、足が動かないことは’当然’としていた。
上半身が動くようになってきたことで、足が動かないことに改めてショックを受ける。
足には管や機械が常に付いているし、場所によっては出血もしている。包帯だらけで、どうなっているのかわからない。わかるのは痛みだけ。
ベッドのリクライニング機能で座れるようになった私は、そんな自分の足をただ眺める。触れる箇所は触ってみる。触感も鈍くなっている。触っている自分の足が、自分の足では無いよう…。
足を動かそうと試みる。…ピクリとも動かない。
「足ってどうやって動かすんだっけ…」
自分の足の動かし方を忘れてしまったような感覚に陥る。足を動かすのって難しかったっけ…?どうやって動かすんだっけ…。
両手で持ち上げてみようと試みる。
重い…。
足ってこんなに重いんだ…。ただでさえ落ちている手の筋力では、自分の足すら持ち上がらない。横にずらすことすらできない。
土日祝日以外は毎日のようにリハビリがある。PT先生もOT先生も同じことを言う。
「リハビリは3歩進んで2歩さがる」。小さな積み重ねなんだと…。
ダメもとで念じる。
「動け!動け!」