闘病記

思い出したことがあるので、ICU の時の話をします。

事故前の私は、髪が長かった。

腰まであった髪は、私の大事な身体の一部だった。自分で言うのも何だけど、年齢の割には髪質は良い方だったので大切に伸ばしていた。

大変なのは、やっぱり髪を乾かすこと。

髪を乾かすのに時間がかかる為、その時間を有効活用しようとバランスボールに乗りながら毎日髪を乾かしていた。

バランスボールに乗るのも得意だったので、映画1本分くらいの時間は両足を浮かせて座っていられた。

ドライヤーをかけながらバランスボールに両足を浮かせて座っているのは、なかなかの至難の技。でも、髪を乾かす時間を体幹を鍛える時間として有効活用するのも私の日課だった。

そんな私の長い髪は、事故でボロボロになった。自分自身の出血によって、髪がゴテゴテになって団子のように固まってしまった。

ICU の時に、看護師さんが一生懸命髪を洗ってくれた。

私はもちろん全く動けないので、どうやって髪を洗ったかと言うと…。

ベッドに防水シートを敷いて…、子供用のプールのようなものを頭の所に置いて…、お湯が入った大きなタンクの機械がシャワーになっていて…。

ベッドに寝たままで看護師さんが一生懸命、私の団子になった長い髪を洗ってくれた。

でも、血液は一度固まると容易には取れない。ましてや相手が髪の毛なので、固まった髪を戻すのは不可能だった。

「切っちゃって良いですよ…」

私はそう言うしかなかった。

もはやクシも通らないので、看護師さんも大きなハサミで潔く切ってくれた。

寝たままで固まった髪を切ったので、仕上がりはガタガタだった。でも…

髪はまた伸ばせば良い…。髪はまた元に戻るから良い…。

私が、退院後真っ先に行ったところは、もちろん美容院でした。