志半ば

闘病記

‘かかと’を地面に着けるためのリハビリは毎日おこなった。

リハビリ病院の退院が3週間後になった頃、私の’かかと’は地面まであと2cmまで来ていた。

あと少しで’かかと’を着けて歩けるようになる。

と思っていた矢先…。

院内でコロナ感染者が出た、とアナウンスがあり…、私たち患者全員が病室から出れなくなった。

トイレ以外は病室内での隔離になった。

リハビリは、リハビリ室でおこなうことはできず、各自の病室内だけでのリハビリとなった。

終わった…。

残り2cmを残して…。終わった…。

病室内だけでは歩くことはできない。

療法士さんの強めのストレッチをしても、自分の体重をかけて歩かないと、足首の可動域は上がらない…。

終わった…。

約2週間後、全員の隔離解除が出た時に、私は誰よりも1番に廊下に出て歩いた。

でも、退院までには間に合わなかった。

私の’かかと’は、地面に着くことはなく、リハビリ病院の退院の日を迎えることとなった。

あんなに退院を楽しみにしていたのに、目標を達成できなかったことで、私の感情はモヤモヤしていた。

退院後は、通院でのリハビリを継続することになる。

でも、通院でのリハビリは色々と制限があるらしく、入院のリハビリほど上手くは進まない、と聞いていた。

残す方法は、アキレス腱の延長術。

そう、手術…。

事故に遭ったことで、あり得ない回数の手術をしてきた。

手術はもうやりたくない。

8cm高だったアウトソールが、2cmまで来たのに…。

退院目前と、志半ばの狭間で、私の感情はぐちゃぐちゃだった。