立つとは…

闘病記

毎日地道なリハビリが続いた。

これが不思議なもので、毎日リハビリをしていると気がついたら少しずつ動くようになっていたりする。

ある日突然動くようになるわけではなく…、気がついたら何となく動くようになっている。

もちろん劇的に動くわけじゃない。

横にずらすこともできなかったのが、1cm位ずらすことができるようになったり…、上げることができなかったのが、1cm位上げられるようになったり…。

本当に地道な進歩だった。

そんなある日、PT先生が「立ってみようか!」と言った。

PT先生がコの字型の歩行器を準備して、立ちやすいようにベッドを高めにして…、

私はいざ立つ!

って…、ビックリするくらい全く立てなかった。

度重なる手術や痛みで、食欲も睡眠も取れていない私の身体はすっかり体重が落ちて、骨と皮のようになっていた。筋力どころか、脂肪すらなかった。

私の足に、私自身を支える力は全く無かった。

まさに”生まれたてのカモシカ”だった。足がガクガク震えて、歩行器に捕まる手の力だけで自分を支える。それでも2秒と立っていられない。

加えて、つま先がバレリーナのような状態で硬直しているので、つま先立ちで立たないといけない。

つま先立ちなんて健康な人でも難しいことなのに、この時の私にできるわけがなかった。

でも…、それを差し引いても…、全く立てないことがショックだった。

「嘘でしょ…」

PT 先生が帰ってからも、嘘なんじゃないかと思って何度も立ってみようと試みた。

何度やっても、足がガクガク震えて全く立つことができなかった。

そもそも立てなければ…、歩くなんてできるわけが無い…。

まだまだ、何も進んだわけでは無かった。