視覚障碍

雑記

先日、バスを待っていたら、白杖(視覚障碍者)の60代女性がこちらに向かって歩いて来た。

点字ブロックの上を歩いて、バス停の先頭で待っている私の後ろまで来て、立ち止まった。

ぶつかりそうになったら声をかけようと思っていたけれど、違和感の無い距離で女性は止まった。

完全に盲目では無いのかもしれない。もしかして、少しは見えるのかもしれない。

もしくは、私の出したわずかな物音を聞き分けたのかもしれない。

いずれにしても白杖の女性は迷わず私の後ろに並んだ。

バスが来て、まず私が乗った。

次、女性が乗る番だったので、どうしようか迷ったが女性の腕を軽く持って誘導してあげた。

私の手助けが必要だったかどうかはわからないが、女性は黙ってバスに乗り込んだ。

私はそのまま優先席に座り、女性がどうするのか見守った。

入口付近に座っていた女性が、白杖の女性の手を引いて

「ここ空いてますよ」と誘導した。

白杖の女性は、それも黙って受け入れていた。

4人掛けの優先席に座った女性は、私の隣の席。

私は最近まで健常者であり、中途で障碍者となったので、どちらの立場もわかるつもりだが…

手助けが必要かどうかって難しい。

障碍を持ちながら’1人で出掛ける’ということがどういう意味か…

もちろん、付き添ってもらえる家族や友人がいない場合もあるが

‘1人で出掛ける’ということは、それなりの”覚悟”を持っているか、”普段通り”だと言うこと。

手助けをすることで、その’覚悟’や’普段通り’を邪魔してしまうかもしれない。

そんなことを女性の横で思っている間に、目的地である終点バス停に着いた私はいつも通り後ろのドアから降りた。

白杖の女性も終点バス停が目的地だったようで、女性は前のドアから降りた。

通常、降りるときは後ろのドアから降りるのがルールだが、終点だと前のドアから降りることもできる。

白杖の女性は何の迷いも無く、前のドアから降りていた。

やはり、この女性にとっては’普段通り’のことだったのだ。

もしかしたら目的地が更に同じかもしれない、お節介だと思いつつも

「どちらに行かれるんですか?」と聞いてみた。

「大丈夫です」

たった一言、女性はそう答えた。

女性の声が初めて聞こえた。

良かった。

もしかして言葉も障碍があるのかと、余計な心配を少ししていた。

ただ、歩き出して、それ以上に気になったのが…

女性は足も悪いようだった…

視覚障碍用の白杖を、下肢障碍の杖として併用で使っている様子だった。

でも、もうこれ以上の手出しは迷惑になるであろう

私は、女性が見えなくなるまで、

勝手に見守った。